彼の言うダイヤルのマークは一見シンプルに見えるが、実はかなり複雑な作り方をしている。その結果は今回のリリースで最も興味深いものになった。それがベンタブラック®︎の限界への挑戦だ。H.モーザーは過去にマーカーをまったく使わないベンタブラック®︎モデルを発表しているが、それには理由がある。スーパーコピー時計触れただけで傷がついてしまうしまう素材だからだ。同じプレスリリースでブランドは、カーボンナノ構造でできたベンタブラック®︎は、ほかのものと接触することができないと述べている。そのため、この小さなマーカーをダイヤル表面に施すために特別な技術を開発する必要があったわけだが、もちろん成功したようだ。
このダイヤルに見られるクラシックとモダンの対極性は単に美しさだけでなく、とてもよく考えられていると感じられる点が魅力的だ。ナノチューブを使ったものにブレゲ針とクラシックなスモールセコンドを組み合わせるというのはとても斬新なアイデアだ。H.モーザーとアーモリーのチームはそれを見事に実現した。
メタルインナーベゼルの上でベンタブラック®︎が皆既日食を表しているというコンセプトは、私にはちょっと難しいが、その創造性と詩情は評価したいと思う。たとえ、その歌が頭から離れなかったとしても。
この時計を手にする機会を得てはっきりしたことがある。38mmのエンデバーケースは極めてすばらしいということだ。これは私がこれまで出合った時計のなかで最も好きなケースのひとつだ。これからもこのサイズ、このスタイルの時計を作り続けてほしいと思う。
さて、この真っ黒なダイヤルから目を離す理由はないはずだが(実際、どんな光の下でも真っ黒)、裏側にあるムーブメントも負けてはいない。サファイアクリスタルのケースバックの裏側には、HMC 327がぴったりと収まっている。
ブランドを知っている人なら予想がつくだろうが、これらの時計は決して安くない。何しろアヴァンギャルドなオートオルロジュリーの世界なのだから。2本とも330万円(税込)。つまりレッドゴールドの価格アップはない。これはいいことではないだろうか?
昔は光があったのに、今はベンタブラックの闇しかない。何も言うことのない、この作品は心のなかの完全な日食なのだ。以上、決まった…。